子どもの未来は日本の未来
人として最も本質的・根源的な「仁」の養成活動としての
通年型農業体験活動
農業は教育の原点
設立10年を振り返って ご指導頂いた教育界の権威の皆様からのメッセージ こちらから>>
三千年以上前の『東洋最古の書「易経」』で児童少年時代の実践道徳のすすめとして「生命を育む活動」を奨励 !!!
設立10年を振り返って =ご指導頂いた教育界の権威の皆様からのメッセージ=
2012年6月3日、子ども未来研究機構創立以来これまでフォーラムやシンポジウム、開発研究会、論語塾、通年型農業体験活動等でご指導賜りました教育界の権威の皆様から、設立10年に際して御寄せ戴いたメッセージを原文のまま順次御紹介致します。尚、記載順はメッセージを拝受した順の記載を御許し頂きたいと思います。なお、「付記」には、御指導いただいた事業、期日等を紹介致しました。
NPO法人「子ども未来研究機構」設立10年を記念して
学校法人銀杏学園顧問
熊本大学名誉教授 﨑元達郎
NPO法人「子ども未来研究機構」は、2012年の設立記念シンポジウムを皮切りに、アニメやTVゲームといったバーチャルな体験があふれ、実際の自然とのつながりを持つ体験が不足がちな現代の子供たちに対して、様々な体験学習を通して、五感を働かせ、体全体で物事を認識し、人間としての感性を磨き、「他者への思いやりの心」「規範意識」「共に働く仲間や家族への感謝」「農作物や生き物に対する愛情」などを育成する活動をされてこられ、一定限の成果を挙げられたことに心から敬意と感謝を申し上げます。
なかでも、2014年に「通年型農業体験活動プログラム」を策定され、西区池上小学校の児童・保護者を対象に、徳育・食育に資する「種から収穫」まで自分達が責任を持って小さな命を育てる活動を継続実施されましたことは、特筆に価すると思っています。
設立10年を皮切りとして、今後もライフワークとして「通年型農業体験活動」を教育政策や地域政策という観点から活動を継続されるとのこと、人がまねできない素晴らしいことと存じます。ご活躍を祈念いたします。
ところで、私の孫たちは、鹿児島で生活していますが、以前、農業体験を年間数日、数年間経験しました。その影響がどの程度あったかは分からないのですが、高校1~2年の間不登校でゲームばかりしていて将来どうするのかと心配をしていた次男(高校3年生)が、最近になって、いきなり目覚めたのか、農業をやりたいから農学部のある大学を目指すと言い出し、周囲を驚かせています。また、その下の子(長女 小学5年生)は、昆虫や小動物に人一倍執着し、可愛がる子供に育っています。これらの事実は、農業体験が何らかの影響を及ぼしているのではないかと思っています。
そこで、一つの提案ですが、NPO法人と古川様のこれまでの活動の成果・実績を証明する一つの方法として、池上小学校の児童で農業体験プログラムに参加して卒業した方々、またはその保護者に、農業体験がその児童の進路や人間性の育成にどのような影響を及ぼしたかをアンケート調査してまとめられると興味深い結果が出るのではないかと思っています。難しいかもしれませんが私の孫たちのような影響が見られれば大変興味深い活動成果の実証となり、今後の活動の充実・発展につなげる大きな原動力になると信じます。
末筆ながら、古川様のご健勝とご活躍を心から祈念いたします。
「付記」 NPO法人子ども未来研究機構シンポジウム
平成25年11月17日 桜の馬場城彩園多目的ホール
「熊本アグリキッズのための通年型農業体験活動プログラムについて」
放送大学熊本学習センター所長(元熊本大学学長) 﨑元達郎
2021.4.26
古 川 泰 通 様
ごていねいな お手紙 ありがとうございます。
10周年を お迎えになったところで、新型コロナウィルスの影響で NPO法人活動を
終了なさるとのお知らせ 本当に残念です。
けれども お志はそのままに 「通年型農業体験活動」は続けていらっしゃるとのこと。
そのお言葉に励まされます。今後これまで以上に大切になると思います。
恐らく社会は変わると思います。その中で、農業を基本に置く地域社会の重要性は増すことでしょう。
五月に北九州の土木の方達が 自然と地域の大切さを語り合う会に参加します。
こんな動きがこれから盛んになることを期待しながら。
最後になってしまいましたが、大好物のハチミツを頂きニコニコしています。大したお手伝いもして おりませんのにお心にかけていただき 本当にありがとうございます。
これからもご活躍下さいますよう、願っております。
中 村 桂 子
「付記 「徳育・食育フォーラム」
平成27 年11 月23 日 くまもと県民交流館パレアホール
基調講演 「子どもの生きる力を信じて」
ー教育の原点としての農業ー
JT生命誌研究館館長 中 村 桂 子
子どもに『生きる力』を育む体験事業の現代的意義
日本生活体験学習学会会長 古賀倫嗣
NPO法人子ども未来研究機構におかれましては、設立10周年を迎える2021年をもって活動終了を決定されたとのこと、大変残念に思うとともに、「子どもの体験事業」を取り巻く厳しい活動環境の中「農業体験」「生活体験」をキーワードに10年間事業を継続されてきたことに対し敬意を表したいと思います。
私も、2012年11月2日、熊本市国際交流会館を会場に開催された「設立記念シンポジウム」をお手伝いしたことが昨日のように鮮明に思い起こされます。折角の機会ですので、「子どもの体験事業」について振り返させていただきます。「生活体験」という言葉が登場したのは、1996年の中央教育審議会答申、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」です。答申は、子どもたちについて、「マスメディアとの接触にかなりの時間をとり、疑似体験や間接体験が多くなる一方で、生活体験・自然体験が著しく不足」という生活状況を指摘し、「生きる力」の育みを教育課題として提起しました。その手立てとして、「生活体験・自然体験等の機会の拡充」の必要性がうたわれ、1999年には生涯学習審議会が「生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ(答申)」発表、子どもたちの体験を充実させるための地域社会の環境づくり(基本的な視点)として、「地域の体験を通して試行錯誤していくプロセスが、子どもを育てる」、「子どもたちに様々な体験の機会を意図的・計画的に提供していく」、「子どもたちをプログラムの企画段階から参画させるような取り組みにより自主性を引き出す」等、6項目の提言を行いました。これが、「子どもの体験事業」に関わる担い手の心構えになっています。
こうした政策提案を踏まえ、1999年には「全国子どもプラン(緊急3ヶ年戦略)」がスタート、「子どもインターンシップ事業」「子どもパークレンジャー」など、文部省だけではなく関係省庁とも連携した子どもの多彩な体験活動の機会と場の充実を図る施策がが推進されました。2004年には、このような国レベルの動きから「地域」が果たすべき役割が見直され、「子どもは地域で育てよう」を合言葉に「地域子ども教室」の取り組みが始まりました。
地域に根ざした多様な活動の機会を提供するため、安全、安心に活動できる子どもの居場所づくりの支援、地域におけるボランティア活動やスポーツ及び特色ある様々な文化の体験活動などの促進を通じて、地域の教育力の再生を図ろうとしたものです。さらに、2007年からは、「地域子ども教室推進事業」と児童福祉法の改正(1997年)により法制化された「放課後児童健全育成事業」とを一体的に進めるとして「放課後子どもプラン」が創設されました。2011年からは「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」と改められ、「学校支援地域本部」「放課後子ども教室」「家庭教育支援」などの教育支援活動を継承するとともに、各地域の実情に応じたそれぞれの取り組みを有機的に組み合わせることを可能にした総合的な事業として実施されることになりました。
こうした国や地域における「子どもの体験事業」の動向を振り返るとき、あらためて子ども未来研究機構様が2012年6月に設立された必然性と社会的使命が明らかになると思います。
さらに、2015年には、中央教育審議会「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校を核とした地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申)」が発表され、その中で「学校を核とした地域づくりの推進」がうたわれました。すなわち、「一方的に、地域が学校・子供たちを応援・支援するという関係ではなく、子供の育ちを軸として、学校と地域が相互にパートナーとして連携・協働し、互いに膝を突き合わせて、意見を出し合い、学び合う中で、地域も成熟化していく視点が重要である。子供たちも総合的な学習の時間や、放課後・土曜日、夏期休業中等の教育活動等を通じて地域に出向き、地域に学ぶ、あるいは、地域課題の解決に向けて学校・子供たちが積極的に貢献するなど、学校と地域の双方向の関係づくりが期待される。」と訴えたのです。
子ども未来研究機構様が、2013年に開始された熊本市池上小学校での取り組みは、「通年型農業体験活動プログラム」というそれまでほとんどなかった自然体験プログラムであるとともに、政策としては、こうした「学校と地域の連携・協働の在り方」を模索し子どもと共にその成果を達成されたという意味では、まさに先進的な取り組みといっても過言ではないと思います。
最後になりましたが、関係されたスタッフの皆様方の今後のご活躍とご健康を心より祈念させていただいて擱筆といたします。 (放送大学くまもと学習センター客員教授)
「付記」 NPO法人子ども未来研究機構設立記念シンポジウム
平成24年11月2日 熊本国際交流会館大ホール
基調講演 「教育政策の変遷と体験活動の教育的意義」
熊本大学教育学部教授 古 賀 倫 嗣
NPO法人子ども未来研究機構活動終了に寄せて
大変、御無沙汰してしております。
コロナ禍の折り、貴機構の活動終了を知り、熊本地震を乗り越えて活動を継続されてきたのにもかかわらず、苦渋の決断をされた皆様のお気持ちをお察しいたします。
さて、今から7年前の平成25年に、ここ福島県喜多方市から古川理事長のお誘いをいただきまして、シンポジウムに参加させていただきました。私は、地方公務員であり、元来、一般事務職員であることから、教育は全くの専門外、ただ、6年間もの間、小学校農業科に携わることができ、市内全小学校での実施につなげることができたことを覚えています。
「コンピュータで株を学ぶより、畑でカブを育てるべきだ」と農業による本当の生きる力を育てる事の必要性を説き、「小学校で農業を必修に」との中村桂子先生の提唱に感銘を受けた当時の首長が、特区制度を活用して、全国初の教科としての「喜多方市小学校農業科」をスタートさせたものです。
当時、同僚の指導主事であった方の言葉を思い出します。「子ども達が、より高みを目指そうとするなら、学力だけではなくしっかりとした土台が必要だ。教室で学力向上を目指すことも大切であるが、実体験に基づく小学校農業科の経験は「本当の生きる力」の育成につながることを実感できる。」と。根源的だからこそ、15年を経ても連綿と「喜多方市小
学校農業科」が続いているのだろう。貴機構の「通年型農業体験活動」の思いと共通するところであると考えています。
農業は、作物という生命を大切に守り育て、その生命でまた自身の生命をつなぐ、農業は人間が生きるための基本的な活動であると言えます。さらに、作物の栽培は、科学的である半面、気候や自然環境という不確定要素が関わり、とても複雑で予測し難い。作物に対する十分な知識と、将来を予測する想像力、そして何よりも作物に対する愛情が必要となる。数ヵ月もの間世話が必要で、小学校の教材としては、とても扱いにくく、先生を悩ませることが多くあります。
学校の立地環境も重要で、田舎であれば農地の確保は可能であるが、都市部では学校規模に見合う農地を確保することはほぼ困難である。喜多方は小学校の教育課程の中に組み込むことができたが、地域の農業者も含めた応援体制があることも忘れてはいけないところです。
熊本の地において、民間主導により「通年型農業体験活動」が実践されたことは、大きな意義を持つものであり、本質的に学校主導、民間主導の差はなく、子ども達が農作業を「なすことによって学ぶ」ことであるように思います。「農業を学ぶ」ではなく「農業に学ぶ」にあり、このことをコーディネートできれば、断片的であっても子ども達の成長につなげることができるのではと考えます。
農業体験やグリーン・ツーリズムを受け入れている農家と連携し、一連は難しくとも、年数回の農業を体験する個別プログラムで、一堂に会することのリスクを排除しながら、塾や習い事の延長として捉えられるようなポストコロナ時代の「個別型農業体験活動」を実践できないかとも思います。また、「農業で学ぶ」コーディネーターの育成を進めていくことで、農園を設置しない異なる手法でも同じ効果を得られるようなことは可能ではないかと思います。
以上、拙い提言ではございますが、古川理事長の人柄と多くの応援者がいれば、何か新しいことができるのではないかと思います。
最後に、貴機構に携わられた多くの皆様の御健勝と益々の御活躍を衷心より御祈念申し上げます。
喜多方市産業部農業振興課
渡部 通
「付記」 「熊本アグリキッズのための通年型農業体験プログラムについて」
平成25年11月17日 桜の馬場城彩園多目的ホール
喜多方市教育委員会学校教育課主査 渡部 通
令和3年4月30日
楢 崎 タ キ コ
美しい花をつけた木々も今では黄緑色に変わり、
初夏の風にのっておどる姿もまた、私たちの心に
安らぎを与えてくれ、今一年中で一番すごしやす
い気候かなと思います。
一方、人々の動きに目をやると新型コロナ感染症
に脅かされ、自由が奪われたような心境です。
先日から、おもいもかけぬすばらしい品を頂きあり
とうございました。
熊本まで通い、いっしょに研修会に参加して楽し
かった日々のことが思い出されます。
大変お世話になりました。あっという間の十年でし
たね。市村自然塾九州もコカ・コーラの支援もなく
なり、リコーに支えていただきながら日帰りの体験
活動です。時々足を運んでいますが寂しいですね。
私は放課後児童クラブで遊びの中に農業を仕組んで、
子どもたち(小1、2、3年15名)と楽しんでい
ます。
まずはお礼まで。後便にてまたお便りします。
(事前にお葉書を拝受していましたので、ご紹介しておきます。)
眠った田畑が子どもの心を耕す
令和3年5月3日
楢崎タキコ
そろそろ90歳を迎える近くのおじいさんが、大きなトラクターを運転して、畑を耕す姿に「元気だなあ」と今まで感心するばかりだった。ある日のこと。そこを通りかかり「おじちゃん、元気ねえ。今度は何植えるとね」と声をかけると、思いがけない言葉が返ってきた。「耕すだけはやっているけれどもうおれは作りきらん。野菜を作っても食べるもんはおらん。あんた何か作らんね。」と。これが子どもとともに農業体験を始めたきっかけである。また、そばには社会福祉法人若楠「グリーンファーム山浦」の畑がある。障害を持った大人の人たちが、太陽の下で楽しそうに作物を育てておられる。そこで「地域で子どもを育てたい」と相談をして、職員の方々にも協力していただくようにお願いをした。
教師生活30数年、退職後、鳥栖市内にある市村自然塾九州で自然の中にどっぷりつかって「農業体験で生きる力を」と子ども達とかかわりを持ち、10年。農業体験の素晴らしさを体感した経験から、もともと、機会があれば地域の子供たちと農業体験ができればと思っていたこともあった。
同じころ、近くの保育園の中に民間の放課後児童クラブを立ち上げられ、そこで働く機会を得た。小学校1年生~4年生まで15名程度の子供が学校を終えてここに登園してくるのである。この園では「家庭のような温かい環境の中でたくましく生きる子の育成」を大きな目標に掲げた。家庭でもない、学校でもない。ここでどのような活動を仕組んでいくのか悩んだ。勉強はもちろんだが、遊びは子どもたちの生活の一部である。遊びの中に週に1回程度農業体験を位置付けた。食べ物への感謝の気持ちはもちろん、泥んこになったり、田んぼの中を走り回って虫たちと戯れたりしてたくましく生きる子の育成を狙いたいと考えたからである。畑に行くときの子供たちの表情は思った以上に喜びにあふれている。最初のころは少しいやがる子もいたが、今は除草が大好きという子もいて楽しく活動している。とくに種をまき、芽が出たときの喜び、小さな1粒の種から大きな実や根を収穫した時の喜びは格別のようである。「野菜たちにも命があるんだ。それをいただいて生きている私たち。」
みんなで協力することの大切さ、寒さ暑さに耐える辛抱強さ、がんばって得た達成感、周りの子への思いやり。たくさんのことを体験から学んでいる。思った以上に成長の姿が見えてくる。自分達の力ではできないことを地域のお兄さんやおじさんたちに手伝っていただいている感謝の気持ちも忘れない。大きな機械で耕していただいたり、学校では学べないたくさんのことを地域の大人の人から学んでいる。ささやかではあるが、畑を気軽に貸していただいているおじいさんには、収穫した野菜で感謝の気持ちを表している。年を重ねるごとに、いつまでできるか自信はないが、元気な間は子どもたちのためにもがんばりたい。
熊本で取り組んでこられた通年型農業体験活動、地域や諸団体等と連携・協力し、コロナが落ち着き次第新たな挑戦を期待しています。農業をされる方も年々少なくなり、遊休農地や放棄地など目立つようになってきました。そんな農地を子どもたちのために有効に使い、そこに大人との交流がうまれたらいいなあと思います。
ー次世代を担うたくましい子の育成を夢見てー
(注)子ども達の農作業風景の写真を8枚戴きましたが編集の都合上割愛させて頂きました。
「付記」 NPO法人子ども未来研究機構設立記念シンポジウム
平成24年11月2日 国際交流会館大ホール
「熊本アグリキッズのための通年型農業体験活動プログラムに
ついて」シンポジウム
平成25年11月17日 桜の馬場城彩園多目的ホール
「熊本における通年型農業体験活動プログラム」開発研究会
平成26年4月27日から平成27年3月3日(10回開催)
NPO法人市村自然塾塾母 楢崎タキコ
古川泰通 様
大変ご無沙汰いたしております。かつ、ここまで失礼を重ねてきてしまいました。本当に申し訳ございません。過日はけっこうな御品を頂戴しながら、御礼申し上げることもしませんでしたこと、あらためましてお詫び申し上げる次第です。
ちょうだいいたしました「ご挨拶」に記されてあります、ご無念の思い、わずか2年という短さですが、古川様の思いが
込められた論語塾に関わらせていただいた私としましても、本当に残念に思う次第です。つたない私の話に目を輝かせながら聞き入ってくれ、発言してくれた子どもたちを思い起こすたびに、コロナ禍さえなければ、毎年楽しく充実した経験ができただろうにと悔やむばかりです。青森に在住しており、なかなか会えない中一と小四の2人の孫娘の姿を、論語塾に参加してくれた子どもたちの姿に重ね合わせていたのかも知れません。コロナ禍が終息し、もし機会があれば、同じように子どもたちと接する催しに参加したいという思いを強くしております。これも、論語塾にお誘いいただいた古川様の御高恩の賜だと感じております。本当にありがとうございました。
大学の方も、4月の新学期スタートから、昨年以上にコロナ禍に振り回されました。一部対面授業が復活したため、それに向けた授業準備をしつつ、他方、昨年と同じ遠隔授業も併存しながら、しかも昨年度の遠隔授業に対する学生の声をふまえて、授業の改善が求められ、それへの対応に四苦八苦しているうちに、5月半ばから感染状況悪化にともない、学期中途で対面を遠隔に切り替えるという大学に指示が下され、そのために慌てて遠隔授業の教材準備を急ピッチでせねばならない羽目となりました。40年近い大学教員生活で、はじめてといっても過言ではない忙しさでした。帰宅後あるいは休日に自分の研究に関わる仕事をするということは日常茶飯事でしたが、大学の授業ありいは諸事を自宅に持ち帰って処理するということは、はじめてに近い経験でした。さらに、そうこうしているうちに、業務の1つ入試に向けた仕事も始まってしまい、ここまで御礼並びにご依頼の件に関するリアクションができないままに時を過ごしてしまいました。私の怠慢のなせる仕儀とはいえ、お詫びしようもございません。なにとぞご海容のほどお願いいたします。
昨年遠隔授業が決まった際には、時間割に縛られなくてすむ、とか、もともと授業が得意ではなかったこともあって、これは楽だなと思ったのですが、いざそうした状態が1年以上も続いてみると、人の顔を見ながら話せること、授業ができることがどれだけ幸せなことを再認識できました。それにつけても、繰り返しになりますが、論語塾での楽しかった時間が思い出されます。小学生を相手にという機会は、これからもしばらくは無理のようですが、私にとっての残り2年余の大学教員生活での、大学生を相手にした授業を大切な時間にしていこうと、思いを新たにしております。
古川様におかれましては、法人活動からはリタイヤされるにしましても、未来の子どもたちへの思いを、これからも何らかのかたちで継続されていかれんことを切に祈念いたしております。まとまりのない文章書き連ねてしまいましたこと、何卒ご容赦ください。また奥様はじめご家族の皆様方にもよろしくお伝えくださいませ。コロナ禍の中、また向暑のみぎり御身大切にお過ごしください。
6月19日 冨田健之
「付記」 第1回「親子で楽しもう!くまもと論語塾」
平成31年1月27日、2月3日、2月24日
熊本市現代美術館アートロフト(5階)
講師:崇城大学総合教育センター
冨田健之教授(中国政治史)
第2回「親子で楽しもう!くまもと論語塾」
令和元年10月20日、10月27日、11月10日
熊本市中央公民館5階会議室
講師:崇城大学総合教育センター
冨田健之教授(中国政治史)
古川泰通様
新型コロナとの共生時代に向けて
2021年9月7日
松 尾 英 輔
新型コロナ感染拡大の影響を受け、対面活動を基本とするNPO法人子ども未来研究機構の活動は続けにくいので
はないかと気になっておりましたが、その懸念が現実になったことを、今年4月22日の御礼の挨拶で知りました。続けづらいことを通り越して、法人としての活動を断念したとの内容には、さすがに驚きました。残念!の一語に尽きます。
振り返ってみますと、古川さんから、こんな活動を始めたいので、協力をお願いしたい旨、電話とお手紙をいただいたのは、10年前、2012年のことでした。趣旨をうかがい、お手紙を拝見しますと、農耕を子どもの育成に活かすという教育の原点に立ちかえった教育観に基づいて、民間レベルの活動を始めるというものでした。
農耕を通しての教育については、私自身の体験あるいは農学部での学生の教育にかかわるなかで、十分すぎるほど認識しておりましたので、一も二もなく賛同する旨、お答えしました。
農耕を通しての教育については、時間がかかりますし、資金も必要となります。しかし、その成果はすぐには現れず、また、見えにくいものです。したがって、当時実施されていたこの種の活動としては、自治体による農業小学校(福島県
喜多方市の活動がよく知られていました)やNPO市村自然塾くらいしかありませんでした。いずれも運転資金に恵まれた活動です。
そのような活動を企画して、個人・有志を中心とするNPO団体が乗り出すというので、正直なところ驚きました。まるでドン・キホーテの活動のような感じをもったことを覚えています。
ともあれ、この活動が地元の有志の方々や賛助会員(企業・個人)のご支援・ご協力で10年も続いたというのは、驚嘆に価するものだと思います。しかも、その内容をみますと、きわめて密度の濃い活動であったことがうかがわれます。
新型コロナウイルス禍さえなければ、いまなお継続されていて、全国的にも珍しい先駆的な民間レベルの活動として注目され、その輪が広がり、さらに新しい経験を積み重ねることができたと思われます。
しかし、決して悲観すべきものではありません。この10年が無に帰するわけではなく、その結果は今後花開くものと期待されます。この活動に啓発された有志の方々が沢山おられますし、この活動を経験して育った子どもたちが成人して、活動の思想とそれを実現する場と機会の創生に目を向けてくれることが期待されるからです。
と申しましのも、ある著名な園芸家から、次のような話を聴いたことがあるからです。
長崎県のある小学校の校長先生がせっせと校庭の花壇の世話をしておられるのを、彼は知っていました。あるとき彼はその先生に、来る日も来る日も一生懸命花壇の世話に精を出しておられるのはなぜですか?と尋ねました。
校長先生の答えは「子どもたちは学校に来て、花が咲いている美しい校庭の光景を眼というファインダーを通して脳というカメラに写し取っているのです。彼らが大人になったときに、その脳裏にある美しい光景を自分でも創り出してみよう、という気が起こるのです。」ということだったそうです。
そういえば、関係者の皆さん自身が、子どもの頃の体験を想い出し、それを追体験してみたいと、思われたことがあるのではないでしょうか。
いっぽう、新型コロナ禍によって、職場においても、学校においても、オンラインの活用が一般化しつつあります。このような動きは、園芸療法やマスター・ガーディナー(アメリカで行われている制度で、市民の園芸活動を指導する人)の教育においてもみられます。そして、そのオンラインではできない対面の実践活動をどうすればよいのか。それを模索する試みが活発に議論され、かつ行われるようになってきているというのです。(参考資料)
御礼の挨拶のなかでは「活動の終了」と記しておられましたが、むしろ、「一時休止」であり、来るべきコロナとの共生時代における「活動再開」のためのエネルギー蓄積とさらなる準備学習の機会ととらえることが出来るのではないでしょうか。
創業者の思いとして触れておられる「易経」の学習、「通年型農業体験活動」を今後取り組むような内外の地域や諸団体と連携・協力し、教育政策や地域政策という観点から行政庁等への要請を重ねることは、まさにその一時休止期間中の活動にほかならないかと思います。
熊本で始められた活動は、1度限りの「大海の一滴」ではなく、来るべき新型コロナとの共生時代にさらに大きな波紋となって全国に拡大するためのブースタ―効果のある活動再開の準備期間に入ったというところではないでしょうか。
ホームページ上での「設立10周年記念小誌」はその第一歩でしょう。この記録を、単にホームページで残す1回限りの、スイッチを切れば消えてしまう情報として終わらせるのではなく、冊子として残すとともに、継続的・定期的に情報発信する場(たとえば、簡単な情報誌であるニューズレターや小冊子など)を保持してゆくことが、活動再開の、そして未来の発展的活動につながるものと考えられます。
ライフワークとは、命ある限り追い求める夢ではないかと思います。
くれぐれも健康に留意して、ご精進ください。
<参考資料>D・レルフ・松尾英輔・浅野房世・三宅麻未・2021. コロナ禍は私たちに何を教えるか。日本園芸療法学会誌131-23
「付記」
NPO法人子ども未来研究機構設立記念シンポジウム
平成24年11月2日 国際交流会館大ホール
「熊本アグリキッズのための通年型農業体験活動
プログラムについて」シンポジウム
平成25年11月17日 桜の馬場城彩園多目的ホール
「熊本における通年型農業体験活動プログラムについて」
開発研究会 平成26年4月27日~平成27年3月3日(10回開催)
九州大学名誉教授 松 尾 英 輔
体験活動を振り返って
池上野菜くらぶ代表 橋本洋樹
子ども未来研究機構の古川理事長から、「池上小学校の児童を対象に、通年型農業体験活動を通じた徳育・食育活動を行いたいので地元のスタッフとして協力をお願いしたい。」とのお話があった。グループで農業体験を行うことにより、学校で学ぶ知識に加えて、生きていくための知恵を取得させたい。すなわち、田畑を耕し、種をまき、水を与え、草を取り、大きく育て上げ、最後はその命をいただくことになるが、その過程での、忍耐力や皆との協調性、そして達成感等は頭で考えることより、体験することでより何かを感じとることができ、これからの成長の一助となればとの趣旨であった。
当時には教育課程の中で、道徳教育の必要性も論議されており、すでに他県では実践的に活動しているところもあり、私たち池上地区としてもこの先駆的活動を側面から応援することとなった。
はじめに、通年型農業体験活動の基本となるマニュアル作りをすることとなったが、国内のどこにも先例はなく、暗中模索の出発となった。九州大学名誉教授の松尾英輔先生、NPO法人市村自然塾九州元熟母の楢崎タキコ先生からのご指導、ご助言をいただきながら各自で分担を決め、約1年がかりでどうにか完成することができた。この60ページのマニュアル本が国立国会図書館をはじめ県、市の教育関係者等に贈られたと聞いた時には少し恥ずかしさを感じたものだった。
農業体験活動に当たっては、米作りをメインとしながらも、野菜についても種類の選択から、作業計画や活動も子供たちの自主性を尊重し、上級生をリーダーとするグループ編成で行うこととした。このことにより、リーダーの指導力や全体の団結力、協調性が醸成されることを目指した。収穫した新米とジャガイモや玉ねぎを使い、カレーパーティーや焼き肉パーティーを開きみんなで収穫の喜びを分かち合うこともできた。また稲刈り時の大空の下、みんなで一緒に食べるおにぎりや、田植え時の泥まみれになってはしゃぐ時の子供たちの輝く瞳にはハッとさせられることが多く、妙な安堵を感じることができた。
他方、上級生になると塾や部活動に時間を割かれ、野菜くらぶへの参加が難しくなるどうしようもない現実に直面し、低学年生と保護者を中心としたファミリー農園的な運営も取り入れながら、今後の方向を模索しているところにコロナの現実が襲いかかり、集合した活動が全くできなくなってしまった。
私たちが8年間にわたって行ったこの取り組みは、今後地域のコミュニティとしての自治会老人会や、学校、行政が協働して運営する大きな核となる可能性があると思われます。古川理事長は今後ライフワークとしてこの取り組みを引き継いで行かれるとのこと。類まれなる行動力に期待し、目標成就を祈念申し上げ雑感といたします。
因みに9月になり突然、池上野菜くらぶのOGの孫娘2人と息子夫婦が、私の菜園の一部を貸してくれとのことでした。何事かと問うと野菜と、花を植えたいのでよろしくと。その後、ジャガイモ、ねぎ、春菊等を植え付け、孫娘が毎日水やりをする様子を眺めていると、私たちの活動も何がしかの影響を与えたのかとニヤニヤしています。
「付記」 平成25年~令和2年まで
通年型農業体験活動の地元スタッフとして指導・助言
池上野菜くらぶ代表 橋本 洋樹